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第3話 コロナはいつまで続くの?
週に1度のコンビニは直ぐに慣れた梨香。
問題はハンバーガー店でした。
「あなたなら大丈夫ね、ハンバーガーの種類も覚えるのが早いから助かっているわ」と店長さんに言われて3日目にはティクアウトの方へ回されました。
コロナの影響でティクアウトの車は数珠つなぎです。『週に4日だから何とかなるかな、ここで辞めたら生活できないものね』と梨香は自分に言い聞かせました。
2ヶ月ぐらいでコロナウィルスが終息すると思っていたところに第1波の次に第2波が来ました。
わずかな預金も生活費に減るばかりです。
梨香は体も心も疲れて来ました。
「ママ大丈夫?」と祐太も心配そうに聞く日が増えてきました。
「そうね、仕事が忙しくて。でも大丈夫」と答えながら梨香自身が自分の限界をわかっていました。
小学校も休校になり学童もなくなり、夏休みはそこまできています。
学童がなくなると祐太は家にひとりでいなければいけません。
『祐太と一緒にいてあげるにはこれしかない』と梨香は玄関にプレートをかけました。
【猫と何でも屋はじめました。ご用のある方はポストにメモを入れて下さい】
プレートをかけてよし!と一息ついた梨香に何年か前に会ったことがあるおばあさんに「こんにちは、何か始めたのかい?」と声をかけられました。
「はい、最近仕事がなくて何か出来ることがあればと思って」と梨香が答えました。
何と驚いたことに、おばあさんは住所が書かれた1枚のメモを梨香に渡し「私は足が悪くて買い物に行けないんだ。これを買ってきてもらえると助かるんだがね」と言うのです。
「はい!わかりました。ありがとうございます」と言うと、梨香は家の中にとびこみました。
「祐太!さっそく依頼があったわ」
「ママ、良かったね。そのメモもらっていいかな?僕も手伝うよ」
祐太はメモを小さなカバンに入れるとイチの首に下げました。
「祐太、どうしたの?そのカバン」
「うん、僕はママが何でも屋を始めるって聞いてイチと何か出来ないかとイチの首から下げるカバンを作ったんだ」と誇らしげに言いました。
梨香と祐太とイチはスーパーまで歩きます。到着すると、スーパーの前に設置場所されている椅子に座っているおじいさんたちが「おやと買い物かい?かわいいねえ」と声をかけてくれました。
「はい、今日から何でも屋を始めたんです。よろしければご利用下さい」と梨香がパンフレットを渡しました。
イチの首に下がっているカバンからメモを取り出すと「イチ、ここで待ってて。すぐ来るから」とスーパーの中に入りました。
買い物を終えると「店長さんはいらっしゃいますか?よろしければこのパンフレットをお知らせ版に貼っていただきたいのですが」と梨香が言うと「いつもここを利用して下さっていますよね、貼っておきます」と快く受けて下さいました。
スーパーを出るとおじいさんたちの間にのんびり寝そべるイチに「帰ろうねイチ」と言うと1つ伸びをしてイチがついてきました。
「おう、またおいでよ。本当に大人しい猫だ」とおじいさんたちが見送ってくれました。
おばあさんに買い物を届けなくてはと、メモに書かれた住所を探しながらキョロキョロしています。
イチはこっちだよと言うように振り返りながら歩いて行きます。
古いアパートの階段を上がると大きな猫が座っています。
「あら、この猫さんは何年か前に会ったことがあるわ。おばあさんにも会ったことがあるのを思い出したわ」と梨香が言うと「にゃ~」と半分開いたドアから部屋に入って行きました。
「早かったのね、お代はいくらかしら?」と玄関まで出てくると「イチ、大きくなったね」と言いました。
なぜイチの名前を知っているのかしらと思いながらスーパーのレシートと買い物した袋を差し出しました。
「では、これ代金そして何でも屋代金だよ」
梨香は受け取ったお金を見て驚きました。
「お買い物の代金プラス二千円は多すぎます」とうろたえていると「いいんだよ、私は身寄りもないしお金を使う事もないんだから」と言うおばあさんの優しい微笑みに梨香は深々と頭を下げて受け取りました。
祐太とイチの夕陽に伸びる長い影を見ながら梨香はおばあさんの親切と優しさを噛み締めるのでした。
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