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「落ち着いてください。私と浮気するのは奥様に仕返しをするためです。同じ苦しみを味合わせたいのですよね?」
「え、ええ。もちろんです」
良一は頷くものの、動揺を隠せない。自分が浮気をすることもそうだが、相手がまゆみであることにも信じられなかった。
まゆみは綺麗だった。長く黒い髪に細い身体。着ているスーツもよく似合い、仕事ができるキャリアウーマンのような聡明さもあった。
良一は妻と比較してしまった。結婚する前は妻も細い身体をしていたが、今ではいたるところに肉がついていていた。笑った顔ももう何年も見たことがなく、仕事とはいえ、目の前のまゆみが向けてくる笑顔が眩しかった。
良一は唾を飲んだ。今まで真っ当に生きてきたので、浮気をすることに抵抗があったが、妻も同じことをして、その妻への復讐のためならと、気持ちは意外にも簡単に傾てしまった。
「お願いします。妻に復讐するために協力してください」
「ええ。一緒に頑張りましょう」
良一はまゆみからペンを受け取り、契約書にサインをした。
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