甘い罠

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甘い罠

 浮気契約の最後の日。  とうとう妻への復讐を果たす時が来た。  良一は自宅の寝室でまゆみと念入りに打ち合わせをしていた。これまでのことを振り返り、口裏合わせも完璧だった。  そろそろ妻が仕事から帰ってくる時間だった。  妻が帰ってきたら、まゆみとの関係も終わりだった。  そう。もうまゆみと仕事の後に会うこともないし、ホテルで一夜を共にすることもない。  本当の浮気相手ではないのだから。  そう思うと、良一は妻のことなんてどうでもよくなった。いや、どうでもいいというのは語弊(ごへい)がある。ただ今の関係を。  良一は部屋の家具の位置などを確認するまゆみに、背後から抱きついた。まゆみは嫌がる様子は見せなかった。 「どうしたんですか? 良一さん」  一度身を離して、まゆみと向き合うと、良一は躊躇いながら言った。 「その、できれば、妻への復讐はもう少し後にしたいんだ」  その台詞に、まゆみは目を(またた)かせた。
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