浮気

3/4
前へ
/11ページ
次へ
「ホテルの部屋で男と女が一緒。それも浮気相手となれば、することは一つだと思いませんか?」  まゆみは仕事で慣れているのか、緊張している様子はなかった。年は良一の方が上なのに、何もかも彼女のペースで物事が進んでいるようだった。  不意にまゆみが部屋の照明を落とした。薄暗くなった部屋で、良一の視界が狭まると、何かが床に落ちる音がした。  良一にはそれがまゆみのバスローブだということがわかり、薄暗い中、まゆみを見ると、身体の輪郭がぼんやりと浮かび上がっていた。  細く華奢な体から目が離せない。けれど、まだ理性は残っていた。 「その、さすがにまずいんじゃ」 「ふふ、良一さんが嫌でしたら、私はこのまま何もなくても構いませんよ。二人でホテルで過ごしたという事実だけでも十分ですから。ただ――」 「ただ?」 「奥様はどうでしょうか? 良一さんを裏切って、良一さんの知らないところで、何度も浮気相手と身体を重ねていた」  良一の脳裏には妻とその浮気相手の情事がはっきりと浮かんだ。途端に胸が苦しくなり、息が荒くなった。  まゆみは裸のまま良一に歩を向けて、淡々と続けた。
/11ページ

最初のコメントを投稿しよう!

56人が本棚に入れています
本棚に追加