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「ずるいと思いませんか? 良一さんは真面目でいい人なのに、奥様は一人で楽しんでいるんですよ。もしかしたら今日だって」
「やめてくれ!」
良一はまゆみの腕を掴んで、側にあるベッドに押し倒した。
怒りは今でも妻を愛している証拠だった。愛しているからこそ許せない。憎い。ただ、それ以上に、もう自分は愛されていないと思うのが一番辛かった。
自分が今どんな顔をしているのかわからなかった。
きっと、酷い顔をしているだろう。
怒り、動揺、緊張。
そんな良一の顔に、まゆみは手を伸ばして触れてきた。
「かわいそうな人。まだ奥様を愛しているのですね。けど、良一さんには私がいますよ。浮気相手の私が」
そう言うと、まゆみは良一の頬を撫でるように掌を動かし、良一の手を掴んで、自分の乳房を触らせた。その時の彼女の顔はとても蠱惑的だった。
「中途半端な復讐でいいのですか? 良一さんの怒りや苦しみを、奥様にも同じように与えなくても満足しますか?」
挑発するようなまゆみに、良一はまゆみの乳房から離そうとしていた手を止めた。
手から少し零れるぐらいの胸は、柔らかさと張りがあった。良一が少し指を動かすと、まゆみからくぐもった声が漏れた。
その声が、良一の理性を壊した。妻に対する怒りや憎しみ。その何もかも、目の前の浮気相手であるまゆみにぶつけた。
その日の夜に得た快感は、良一が今までに感じたことのないものだった。怒りや憎しみだけではない。妻がいながらも、まゆみと関係を持ったことで、スリルや背徳感に興奮が冷めなかった。
良一が知らなかった快感は、まるで脳を犯すようだった。
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