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第3話
「つまり、何ですか?マックスの馬鹿者のせいで召喚の儀に必要なマジックアイテム(触媒)が偽物とすり替えられていた…と?」
妙齢の色気のある長く白い髪に白ローブ姿の女性がリルに尋ねる。
「そうなんじゃ~~!!あっれほど二度とやらぬと申しておったのに~~~……!!!」
そこは魔導騎士団の作戦立案のための会議室だった。リル、マリス、そして騎士団長参謀であるクォーク・エル・グリドラを始めとする、聖都ラングーンを守護している顔ぶれが一同に会している。
「………困りましたね……。こんな珍事はさすがの私(わたくし)も経験がありません。騎士団に伝わる書物にもこんなアクシデントはどこにも書いてなかったはずです。」
「どうしたら良いのじゃ~~~!!!魔導騎士団の先代に会わす顔がないわい~~~!!!」頭を抱えて丸くなるリル・クイン。
「……失敗したからといってすぐに次の召喚の儀を行うと言うわけにもいかますまい。召喚を行うにはまた色々な条件が必要となりますゆえ。なので、とりあえずはその異世界から呼び出した者が使えるのかどうか、それを確かめてみるというのはどうでしょうか?」
「でもでも奴にはステータス、というかそもそも町人にすらあるレベルの項目までもがなにやらよくわからん事になっておるのだぞ?本当に大丈夫なのか?」
「ふっ、リル様。所詮は奴はこの世界の人間ではありませぬ。例え何処かで野垂れ死んだとしても一向に差し支えはございませぬ。」そう言うとクォークは冷たい笑みを浮かべた。
「おっそいなぁ~~!!一体あいつら何やってやがんだ!!」
こちらはただ一人だだっ広いホールに取り残された勇者(?)。
先程からイライラと円卓を囲む椅子のひとつに腰掛けダダダダダダッと貧乏揺すりをしている。リル逹白ローブの一団が出ていってから優に30分は経過していた。異世界にいきなり召喚されたかと思ったらこれである。そりゃあ貧乏揺すりの一つもしたくなるというものだ。
カツカツカツカツ、ダンッッ!!と音がして少年が振り返るとそこにはリルとマリス、そして今まで会った事のないどこか冷たい印象の妙齢の美人が立っている。
「…では主にこれから重大な報告をする事としよう……!!」リルが決意に満ちた瞳で重々しく言い放った。
「………というわけで、なんじゃ、つまり召喚の儀に少し差し障りがあったと言うか、じゃな……。」
まさかのカミングアウトに少年はしばし言葉を失った。
「……えっと、つまり儀式が失敗したということは俺、勇者じゃないのぉーーー!?えぇっーーー!?!?」
気まずい沈黙が場を支配する。
(いきなりあちらの都合で呼び出されたかと思ったら俺、偽勇者なのーーー!?!?えぇっーーーーー!?!?)
頭が真っ白になった少年にリルがぽつり、ぽつりと語りかける。
「…いやじゃから、一応我らの定義では主は一応勇者とは言える、とは、思う………。」
(いやいやいやいや、一応、一応、ってめっちゃ自信無さそうじゃーーーん!!!!)
「……こほん。とにかく我らとしてもそう容易く召喚の儀を執り行うというわけにもいかんのじゃ。召喚するには色々手順もあるのでな……。」
実に苦々しい表情で歯切れ悪く続けるリル。気のせいかその、ポニーテールにまとめたピンク色の髪も陰りが差したように見える。
「えぇーとぉー、…………で俺、どうなるわけ??」
「……普通は召喚した者の適正などを見てから剣技を授けたり魔法を授けたりするのじゃが……。主の場合は適正が全く訳わからんわけじゃから、その、まずは実戦してもらおうか、と……。も、もちろん、最初は誰でも倒せるようなよわ~~~いモンスターとじゃぞ!!いきなり無理を言うつもりはないんじゃぞ!!」
(えぇーー??異世界ものってなんのチートも魔法もないままいきなりモンスターと戦わせられるっけ??そんなもんだったっけ??何かおかしくない!?)
「…というわけで、主にはこれよりバースの泉という場所まで案内(あない)としてマリス同行のもと、モンスターたちと戦いにいってもらう!!それでは頼んじゃぞ……マリス!!」
舌でも噛んだのか、少し顔をしかめて最後かみっかみのまま何事も無かったかのようにリルが締める。……かくして、俺の前途多難な冒険が始まった……。
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