眼鏡おぼこの朝

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眼鏡おぼこの朝

 異世界からこんにちワン 麗しのぶるああああ編  朝に光を一杯に浴びて、彼女は目を覚ました。  分厚い瓶底眼鏡をかけて、くしゃくしゃになった髪を梳かした。  友達のユノから貰ったスリップを脱いで、いつもの制服に着替えた。  部屋の窓際にはたくさんのケージが並んでいた。  先生の影響からか、彼女も爬虫類を飼育するようになって結構経っていた。 「おはようみんな。朝ごはんですよー」  飼い主が近づいたのを察知して、爬虫類達は色めき立っていた。  何かくれんの?!ヒャッホオオオオウ!  そんな風に多種多様の爬虫類はガラス壁に集まっていた。  やんなっちゃーなーもー。という空気を出すのが、数十万匹に増えた新種のゴキブリ、ジョナサンローチだった。  友達のアリエールは、ケージを一瞥し、ぎゃあああああああす!と叫んでいた。  地獄の赤い悪夢が!黒くないけどうぎゃああああああ!ですわ!  でも、雑食で何でも食べるけど、ガラスケージを登れないから。アースワンのレッドローチとおんなじで。繁殖力は物凄いけど。  そんな会話をしたことを思い出しながら、彼女は、小箱にピンセットでローチを移した。  カサカサ君。ごめんね。  爬虫類は大喜びでローチに食らいついていた。  ジョナサンローチの発見は大きかった。  更には爬虫類大好きな先生がどんどん安価なガラスケージの大量生産を続け、繁殖事業を発展させ、今ではアースツーに未曾有のペットブームが起きていた。  凝り性の先生が公開したペット部屋の映像が、在野の爬虫類マニアを狂喜させたそうだ。  しかも先生は最近海洋生物の飼育研究を始めていた。  先生が一から立ち上げたアクアリウムは本当に綺麗で、後塵に拝そうという一般ユーザーを大いに刺激した。  最近先生はどんどんマニアのカリスマとして光輝いているような気がしていた。  王様がそれでいいのかな?オタク王って呼ばれてるし。  彼女が飼育している爬虫類は、主に飼育し易い食虫性の小型爬虫類ばっかりだった。  一般レベルでは公開不能な獰猛な爬虫類や虫類は、先生の隠し部屋に今もいて、迂闊に逃がすと万単位の死人が出るような生き物で溢れ返っていた。  彼女の部屋はピンクやエヴァーグリーンカラーに染まっていて、確かにケージ周りにもファンシーな情緒が満ちていて、デンジャラスな空気は微塵もなく、誰が見ても可愛らしいペットを飼う女の子めいていた。  しかし、  インフェルノホルニッセの毒の抽出は進んでるかな?フェリーチェさんが頑張ってるといいな。  私のジュースの開発に、あの毒が役立つのに。  健全さやファンシーさは全くなく、誰もが近づこうとすらしない最悪の毒生物に思いを馳せる理系独身女性の姿があった。  彼女は、餌をやり終え、手近な転移スポットに向かい、職場に転移して行った。  彼女の名はルルコット・タルボット。  誰かがつけた二つ名は、破滅と絶叫の魔女。  これから、彼女の恐怖の1日が始まる。
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