プロローグ

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プロローグ

 やぁ。僕の名前はアイヴァン。十才の男の子さ。でも僕は昔から大人びていて、 「前世の記憶があるのですか?」 「異世界から転生してきたのですか?」 「実は、中身は大人ですよね?」  なんてことを、よく聞かれる。けれど、僕はそうじゃない。異世界から転生してきたのは、僕のおばあちゃんの方だ。彼女には、前世の日本での記憶がある。  その前世の知識で、おばあちゃんはおじいちゃんを助けた。おじいちゃんは、内乱でばらばらになったこの国を再統一したんだ。マスケット銃をかついで、毎日のように戦いに明け暮れていたそうだよ。  王国がひとつになって平和が訪れてから、おじいちゃんは初代国王に、おばあちゃんは王妃になった。僕は、そのおばあちゃんにそっくりというわけ。 「せっかく異世界に来たのだから、魔法を使いたかったわ。かわいい妖精と話すとかを期待していたのに。実際には馬に乗って、火縄銃を撃って、戦場を駆け回って。ステータス! とさけんでも、何も現れないし」  おばあちゃんは残念そうに肩をすくめる。僕を含めて日本が分からない人間には、彼女の言うことは理解できない。魔法や妖精なんて、子どもが読む絵本の中にしかないのに。あと、ステータスって何だい? でも僕は、おばあちゃんが大好きだ。  今、おじいちゃんとおばあちゃんは隠居して、王都郊外にある邸に住んでいる。僕のお父さんが、二年前から国王をやっているよ。国王に選ばれてから、お父さんは毎日いそがしくて大変そうだ。 「父が平和にしたこの国を、私が発展させていかなければならない」  お父さんはそう言って、がんばっている。僕は、すえっ子の王子なんだ。僕には、お兄さんが三人いる。  先月、――三月のまだ寒い日、僕は祖父母の家に遊びに行った。そうしたら、大人たちが大騒ぎしていた。 「ソフィア様の大事なブローチがない」 「まさか盗まれたのか?」 「いやいや、どこかに落としただけだろう?」  メイドも料理人も小間使いも庭師もみんな顔を真っ青にして、おばあちゃんのブローチを探していた。あぁ、言い忘れていたね。おばあちゃんの名前はソフィアだよ。  僕はみんなを助けたくて、ブローチを探した。ちょっとした冒険の後、ブローチは見つかった。僕がブローチを見せると、おばあちゃんとおじいちゃんは驚いた。 「アイヴァンは、小さな探偵さんね。私が前世で観ていたアニメの主人公に似ている。眼鏡こそかけていないけれど」  おばあちゃんは、僕のもじゃもじゃの髪をなでて笑った。僕はほめられてうれしい。 「タンテイって何だい? アニメは覚えているよ。日本にある動く絵本のことでしょう?」  おばあちゃんは、ふふふと笑い声をたてた。 「難解ななぞを解いて、困っている人たちを知恵と勇気で助ける。それが探偵よ」  そんな職業があるのか。探偵こそ、僕が目指すべき最高の職業だ! 僕は興奮した。 「おばあちゃん、僕は探偵になりたいよ」  彼女は目を丸くする。そして探偵には、「少年探偵団」が必要と教えた。少年探偵団とは、一緒に事件に取りかかる仲間のことさ。今から話すのは、僕がその仲間を手に入れるまでの物語。さぁ、読者諸君、じっくりと読んでくれたまえ。
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