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5人でロウソクを円く囲む。みんなしゃがんでひとりずつ、線香花火に火を点ける。
垂らした先端が揺れながら、丸くオレンジ色に膨らんでくる。そのうち糸を引くような強い光が現れて、中央からパチパチとはじけ飛ぶ。刹那の力強さが哀しい。勢いはすぐに弱まり、短い光の糸を数本まき散らすと丸い玉もろとも地面に沈んでいき、静かな暗い闇がそれを受け止めた。
私たちの、この関係ももうすぐ終わる。ここにいるみんながわかっていた。来年はそれぞれ別の道を歩いている。
私は足元を見ていたが、涙を堪えられなくなり、鼻がぐすっと鳴った。みんなが私を見たのがわかった。
「七海」
左隣の咲が私の肩に手をかけた。
「七海ちゃーん」
右隣の瞬が両手を広げて私を抱きしめようとしたが、それはポーズだとみんなわかっている。にこがぱこんと瞬の頭を叩いた。
「いてーなぁ」
悠星が立ち上がって話し出した。
「俺さ、大学で宇宙工学の研究しようと思ってる。で、北の方に行こうかなって」
「北? 東じゃないんだ」
咲が楽しげに訊く。悠星が王道をはみ出すなんて嬉しい、とばかりに。
「いい研究室があるらしいんだ。……七海は?」
悠星が真っ直ぐ私を見ている。
「七海はどうするんだ? 一番ふらふらしてる」
「私は……理系学部を目指すのは間違いないけど、具体的には考え中」
情けなかった。
みんな自分の進路を選択している。私はのっそり顔を上げて海を見た。もう辺りはすっかり暗くて、空と海の境界線はよく見えない。左の方を見ると、遠くの突堤の小さな工場の窓の光が、まるで漁火のように小さく閃いていた。
私以外のみんなは希望とともに光に導かれていく。私は独り、とりのこされた。
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