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本当は言う必要がないとわかっている。言うと、精神年齢が低いことがばれてしまう。いやもうみんな知ってるか。
「友だちでいてね、これからも」
私が呟くと、悠星が私の頭をくしゃっとなでた。にこも気楽な感じで言う。
「七海、大丈夫。もしこの先会えなくなったとしても、なんやかんやでつながってると思うよ、私たち」
「あ、そうだ、お土産」
咲が私たちに小さな小袋をくれた。
「なんだよ、メープルシロップじゃねえの」
瞬がいつもの軽口をたたく。
「数買うと重すぎて、空港で荷物が引っかかっちゃうの」
中身は、小さな赤いメープルリーフがついたキーホルダーだ。
「ベタだね」
美大志望のにこが言うと咲が怒った。
「もう何なの、さっきから!」
「私はありがたくもらっとく」
デザインなんかどうでもいい。5人が共有できるものがあることが、今の私には重要だった。
「ありがとう~七海ぃ」
「こっちの方がありがとうだよ、咲」
咲が私に抱きついて、瞬たちに悪態をつく。
「まったくこいつらときたら」
そのとき悠星が小さな声で、サンキュー咲、と言ったのを、みんな聞き逃さなかった。
「わ、悠星、気持ちわる」
「悠星が素直だ、おかしい」
「……みんな俺のこと何だと思ってるんだ」
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