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お返しとばかりに抱きしめられ唇を奪われた。
「んんっ、んっ、んーっ」
ばか、側にガルーダとルウルウがいるのに。
それでも、深くなる口付けに頭がぼぉっとしてくる。
かくっ、と膝の力が抜ける頃、ようやく解放してもらえた。
「…はぁ…はぁ…ルースの、ばかぁ…」
「かわいらしくキスしてきたのは霙、お前だぞ!?
あんなことをされて正気でいられるか!?」
慌てて辺りを見渡すが、ガルーダとルウルウの姿はなかった。
「気を利かせて出て行ったのだろう。
ほら、霙、見ろ。
俺達がここにいるのに気付いたんだろう。皆んなが手を振っているぞ。バルコニーに出よう。」
手を引かれてバルコニーへ出ると、わっ、という声があちこちから聞こえてきて、こちらに向かって手を振っているのが見えた。
ルースは俺の肩に手を回し、空いた手を振りながら叫んだ。
「みんなーーっ!ありがとう!!
霙と共に、この龍の国を守り豊かな国にすると誓うぞっ!
ほら、霙も手を振って。」
照れ臭いけど、遠慮がちに胸の前で手を振る。
どよめきが走り、家々からひとびとが飛び出してきて手を振ってくれる。
絶対にこの国を守っていく。
二度とグルディのような奴を出さないように。
「霙。」
名を呼ばれてルースの方を向いた。
「愛しているよ。」
俺はとびっきりの笑顔を見せて、ルースに抱きついた。
「言われなくても分かっているよ。でも毎日言ってね。俺も伝えるから。
ルース、愛しています。」
見つめ合い、引き寄せられて、また唇を重ね合う。
きゃーーっ、うおーーーっ、という地鳴りのような声と拍手と指笛が聞こえてきた。
恥ずかしいけど見せつけるんだ。
ルースは俺のもので、俺はルースのものだって。
きっと俺達の愛は龍の国に伝染して、あちこちで愛が育まれるに違いない。
そして、いつまでも心豊かな美しい国でありますように、と祈りながら、優しくて激しいキスに溺れていった。
fin.
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