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SS.結婚祝い
怒涛の結婚式が終わった。
街は何処もかしこも相変わらずのお祝いムードが抜け切らず、家々の周囲には色とりどりの花が枯れることなく咲き乱れ、心なしかひとびとの表情も和らいでいるように見える。
名実ともにルースの『お妃』となった俺は、流石に数日間は動けなくてベッドの住人と化したのだが(紛れもなく絶倫大魔王のルースのせいだ)、龍の国の歴史を勉強したり、厨房で新しいメニュー作りに参加したり、ミリョンの畑で収穫を手伝ったり…とそれなりに忙しい毎日を送っていた。
そんな中、毎日のようにキリヤから催促の便りが届く。
『結婚式が早すぎたせいで贈り物が間に合わなかったじゃないか!
何を所望か、急ぎ知らせてくれ!!!』
「…というわけなんだけど。
毎日毎日、酷い時には日に2度も3度も催促が来るんだよ。
全く…今じゃ、キリヤは世話焼きのオバチャンと化してるよ…ルース、どうしよう?」
「ぶふっ……そうだな…霙は何が欲しいんだ?
そうは言っても、お前に触れる物は他人ではなく、全て俺からの贈り物を纏わせたいからな。」
ルースはそう言いながら、指で優しく俺の髪の毛を梳く。
2人がいるのは言わずと知れたベッドの上。
ルースに背中からすっぽりと抱かれ、その身を逞しい胸に預けて、座椅子がわりにしているのだ。
一国の王を椅子代わりにするなんぞ、俺にしかできない。
世界で一等安心できる場所を確保して、俺はふるふると首を振った。
「うーん…俺はもう十分過ぎるほどに何でも貰ってるからな…何にもいらないんだ。
龍の国のみんなが元気で過ごしてくれたら、それでいい。」
「ははっ。相変わらず欲のない。霙らしいな。
そんな霙だから、みんながお前のことを大切に愛おしく思うんだ。」
ルースは心底嬉しそうに笑うと、そっと俺にキスをしてきた。
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