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俺は蕩けかけた頭を急速に平常運転に戻しつつ、ルースの頭を撫でてやりながら、できるだけ優しい声で宥める。
「ルース…こっちが出て行くまで、キリヤはきっとドアを叩き続けると思うよ。
観念して応対してあげようよ。
ね?いい子だから…」
ぶすくれた顔のルースは、俺をぎゅっと抱きしめると
「後で…この続きを…」
と、耳元で囁いた。
腰に甘美な痺れが駆け抜け、ぶるりと身体が震える。
声だけで犯されそう。
「…分かった…後で、ルースの好きなだけ…」
後々後悔することになるのだが……雰囲気に流され調子に乗って囁き返すと、ぱぁっと花が咲いたような満面の笑顔になったルースは、特大のリップ音付きのキスを落とすと、いそいそと俺の上着を直しドアに向かって行った。
そしてドア越しに叫ぶ。
「キリヤ、五月蝿いぞ!
今行くから待ってろ!
ガルーダ、案内してやってくれ!」
「はいはい。やっとお出ましか。
おーい、お妃さんも一緒にな!」
「承知いたしました。さ、キリヤ様、こちらへ。」
ったく…とブツブツ文句を言いながら身支度を整えたルースと、緩んだ顔を引き締めた俺は、揃ってキリヤの待つ謁見の間に向かった。
不機嫌さを隠さないルースは、キリヤの顔をまともに見ようともしない。
それに全く動じないキリヤは、俺達が席に着くや否や
「おい!一体いつになったら返事をくれるんだよっ!
こっちにも段取りというものが必要なんだぜ。
返事をくれないなら、勝手に送りつけるぞ。」
言葉尻は物騒だが、顔も声音も笑っているから冗談半分なのはよく分かる。
「その話を今の今までしてたんだよ。
それをお前が邪魔しにきたんだろうが。」
「で?決まったのか?」
俺達は顔を見合わせ頷いた。
ルースが真面目な顔をして告げた。
「イスナに病院を。」
キリヤが聞き返す。
「は?イスナに…病院?」
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