SS.結婚祝い

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「そうだ。 イスナ出身の医者の卵達が戻ってくるまでは、城下の医者から希望者を募って常駐もしくは定期的に通ってもらうつもりだ。 それはこれからドリナ先生を代表として交渉していくんだが。 もしイスナで望む者がいれば、遠国まで行かずとも龍の国で学べば良い。 だから、早々にハコモノは立ててもらわねばな。 資金繰りが厳しければ、必要な機材なんかも俺から援助しよう。 キリヤ、それが俺達2人の望みの品だ。 何か文句あるか?」 「…何だと?イスナに病院を? おい、ルース、お妃さん…本気で言ってんのか!? お祝いだぞ!アンタらの! それがどうしてそんな話になってんだ!?」 「だって『何でも欲しいものを』って言ったのはキリヤだろ? だから、欲しいものを伝えてる。 俺はもう唯一無二の本当には手に入れてるから。他はいらない。」 医者のことまで考えてくれてるルースに感謝しながら視線をルースに向けると、微笑んで頷くルースの視線と絡み合った。 大切な伴侶にとびっきりの笑顔を見せて、再びキリヤに告げる。 「だから。 イスナに病院を建ててほしい。 それが俺達への結婚祝いだ。」 キリヤは黙って視線を下に落としたまま返事をしない。 どうしよう。怒らせたのか? 言い方がまずかったのだろうか? ガッ、と椅子を後ろに引いたキリヤが突然視界から消えた。 「えっ、キリヤ?」 立ち上がり覗き込むと、片膝をつき胸の前で手を組む、最大限の服従の姿勢を示すキリヤが目に飛び込んできた。 その身体が小刻みに震え始め、くぐもった嗚咽まで聞こえてくる。 キリヤの心の声が、俺達に痛い程伝わってくる。 ルースは俺の手をぎゅっと握った後、『任せろ』というように頷いた。 俺も頷き返して、キリヤに近付くルースを見つめていた。 キリヤの腕を取って引き上げ同じ目線になったルースは、キリヤの背中をバシバシ叩きながら言った。 「キリヤ。 俺達は“親友”だろ?親友にそんな態度は必要ない。 さあ、今から忙しくなるぞ。」
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