SS.結婚祝い

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両目を真っ赤にしたキリヤは、その言葉にただただ頷くだけだった。 暫くして気持ちが落ち着いたのか 「お妃さん、やっぱりアンタには敵わないよ。 ルース、最高のヨメを手に入れたな! イスナの民を代表して深く、深く礼を言う。 本当に…本当に感謝する… そうと決まれば、こうしちゃいられない。 帰って会議だ!また連絡する。じゃあな!」 と、いつもの口調に戻ると、大慌てで飛び出して行った。 ふと窓の外を見ると、鱗を煌めかせて猛スピードで飛んでいく青い龍が点になり、やがて見えなくなった。 ふぅ、と大きく息を吐いたルースが、俺を背中からすっぽりと包み込んだ。 甘やかな匂いと温もりが俺を纏う。 「霙、ありがとう。よかったな。 さぁ、俺達も忙しくなるぞ。 早速ドリナ先生達に相談しなくては。 ガルーダ!先生方のご都合を聞いてくれ! あわせてエスティラ達の召集も頼む。 イスナ病院建設のプロジェクト始動だ!」 ドアの外から、承知いたしました、という声が聞こえ、ガルーダがあちこちに指示を出す声が響く。 俺はルースに抱かれたまま、胸の前にクロスされた腕にそっと両手を添えた。 「…ルース、我儘聞いてくれてありがとう。 お医者さんのことまで…俺、まだそこまで考えていなかったのに。」 ルースは俺の頬にキスすると 「いつかそうなればよい、と俺もそう思っていたから。 霙が俺と同じ気持ちで嬉しかった。 あの時のように、志高くイスナに行ってくれる者がいたらよいのだが…まぁ、ドリナ先生達との話し合い次第だな。」 小一時間の後、緊急招集された医者の代表と、エスティラさん達重鎮が揃った。 ルースの希望で、俺も参加させてもらうことになった。 「……という訳で、共同でイスナへの病院建設を行う、というのが俺と霙の希望だ。 ぜひ賛同してもらいたい。 建設にかかる不足分の負担金は、俺の私費から出すつもりだ。 派遣に同意してくれる医師がいるのか等々、今から皆と相談しながら話を詰めていきたい。」 ルースの説明に、皆深く頷いていた。
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