2314人が本棚に入れています
本棚に追加
両目を真っ赤にしたキリヤは、その言葉にただただ頷くだけだった。
暫くして気持ちが落ち着いたのか
「お妃さん、やっぱりアンタには敵わないよ。
ルース、最高のヨメを手に入れたな!
イスナの民を代表して深く、深く礼を言う。
本当に…本当に感謝する…
そうと決まれば、こうしちゃいられない。
帰って会議だ!また連絡する。じゃあな!」
と、いつもの口調に戻ると、大慌てで飛び出して行った。
ふと窓の外を見ると、鱗を煌めかせて猛スピードで飛んでいく青い龍が点になり、やがて見えなくなった。
ふぅ、と大きく息を吐いたルースが、俺を背中からすっぽりと包み込んだ。
甘やかな匂いと温もりが俺を纏う。
「霙、ありがとう。よかったな。
さぁ、俺達も忙しくなるぞ。
早速ドリナ先生達に相談しなくては。
ガルーダ!先生方のご都合を聞いてくれ!
あわせてエスティラ達の召集も頼む。
イスナ病院建設のプロジェクト始動だ!」
ドアの外から、承知いたしました、という声が聞こえ、ガルーダがあちこちに指示を出す声が響く。
俺はルースに抱かれたまま、胸の前にクロスされた腕にそっと両手を添えた。
「…ルース、我儘聞いてくれてありがとう。
お医者さんのことまで…俺、まだそこまで考えていなかったのに。」
ルースは俺の頬にキスすると
「いつかそうなればよい、と俺もそう思っていたから。
霙が俺と同じ気持ちで嬉しかった。
あの時のように、志高くイスナに行ってくれる者がいたらよいのだが…まぁ、ドリナ先生達との話し合い次第だな。」
小一時間の後、緊急招集された医者の代表と、エスティラさん達重鎮が揃った。
ルースの希望で、俺も参加させてもらうことになった。
「……という訳で、共同でイスナへの病院建設を行う、というのが俺と霙の希望だ。
ぜひ賛同してもらいたい。
建設にかかる不足分の負担金は、俺の私費から出すつもりだ。
派遣に同意してくれる医師がいるのか等々、今から皆と相談しながら話を詰めていきたい。」
ルースの説明に、皆深く頷いていた。
最初のコメントを投稿しよう!