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霙は頬を膨らませてルースを軽く詰る。
「…そうだよ…幾ら強くて完璧な龍王だからといっても、無理はしちゃダメだ。
自分の身体を1番に考えて。自分にしか分からないんだから。
万が一にでもルースに何かあったら、俺は…俺は……」
「霙……」
霙の頬を人差し指の背でそっと撫でる。
上目遣いで見つめてくる霙の瞳を穴が開くかというくらいに見つめ続ける。
愛おしさが止まらない。湧き上がる想い。
霙の笑顔のためなら自分の命なんて喜んで差し出せる。
番になる、心も身体も通じ合う、というのは、こういう気持ちを持ち続けることなのか。
霙の瞳が潤んでいる。
きっと霙も俺と同じ気持ちなんだろう。
「分かっている。もう、無理はしないから。
お前をひとりなんかにしない。約束する。
何があっても俺達は一緒だ。
霙、愛している。狂いそうなくらいに。」
くすくすっ
「狂ったらそれはそれで困る。でも、俺もルースを、んっ」
バニラの匂いの唇に吸い付いた。
遠慮がちに開く唇を噛むようにキスを仕掛ける。受け入れ方は辿々しいけれど、霙の思いは伝わってくる。
霙の胸を弄り掛けたその時、ノックの音がした。
慌てて俺の腕から逃れた霙が返事をする。
「はっ、はいっ!」
「エルグです。失礼いたします。
母からの繋ぎです。」
「どうぞ。」
軽やかに滑り込んできたエルグが膝をついて話し始めた。
「ルース様、霙様、母からの伝言を…
『エスティラ様からの情報です。
[遠国からの薬を使い、皇太后様を亡き者にしたのはラジェ様。その黒幕はグルディ。]
長年、グルディを疑って調査してきた結果だそうです。
我々と協力してグルディを暴くと約束してくれました。』」
「何だとっ!?母君を手に掛けたと言うのかっ!?
…ラジェ、グルディ……絶対に許さんっ!!」
ルースの身体が金色に染まり始めた。
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