炙り出し

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それからのエルグの動きは早かった。 弟グリスと忠実な部下フォルダを人目につかないように呼び寄せると、ガルーダとの話し合いを一字一句違わぬように伝えた。 2人とも驚いた風に見えたが、すぐにいつものポーカーフェイスに戻ると口々に告げた。 「俺は絶対に何か動きがあると思ってたんだ。 兄貴、十分気を付けろよ。 グルディは何を仕掛けてくるか分からない。」 「エルグ様、ガルーダ様への繋ぎは私が命を賭けて全うします。 どうか、御身お気を付けて。」 「ありがとう。 2人には迷惑を掛けるが……ルース様と霙様のことをよろしく頼む。 早速だが……」 夜更けまで3人の話し合いは続いた。 こうして話を詰めるのは、恐らく今夜が最後になるはず。 細部に至るまで事細かく計画が練られた。 もし変更があった場合でも対処できるよう、その連絡方法まできっちりと決められた。 文書に残すことはできず、各々の頭に叩き込んでいく。 「『反逆者』と指差されようが、俺はこの国を…ルース様と霙様を必ずお守りする。 俺のことをどうか最後まで信じてほしい。 …これで暫く事が片付くまで、お前達とは話もできないな……」 「兄貴、心配いらない。任せてくれ。」 「エルグ様……」 フォルダは胸が詰まって言葉にならない。 「闇に巣食う奴らを成敗しこの国を立て直した暁には、美味い酒を酌み交わそう。 グリス、フォルダ…頼んだぞ。」 無言で頷きながらハグを交わしてくる2人の目には光るものがあった。 エルグは敢えてそれに気付かぬフリをして、闇に紛れ2人を送り出した。 エルグ、賽は投げられた。 後戻りはできぬ。 この国の将来はお前にかかっているんだ。 責任の重さにぶるりと身震いした若き龍は、夜空に煌めく星を眺めながら決意を新たにしていた。
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