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平凡な親から生まれた子が果たして本当に優れていたかは、後になってみなければ分からない。
知識も学歴も持たない雲雀が渡せる報酬は、値段など付けられない無償の愛と、日出人の住み込み先である建設業者の寮とタワーマンションの裏口を結ぶ、僅かばかりのタクシー代。クローゼットの中で腐っている宝に興味を示すほど、日出人は強欲でも物質主義でもない。
故事や歴史の裏に関する知識も、物事を深く考える力も持たない雲雀が知る由もなかった。
日出人という名を持ちながら、姓と同様、月の上っている時間にしか傍に居られない事実が、どれほど彼自身を苦しめているか。その名の通り月と日、すなわち陰と陽が交錯するような、一筋縄ではいかない感情がどれほどのものか。
ともすれば恋愛感情や劣情よりも複雑な、憐憫の情や、熱情とも呼べる情念の炎を抱いているなどとも。
面会さえできなくなって数年が経った頃、ようやく雲雀の身の上を知った日出人は、間近に控えていた進学を取り止めた。卒業と同時に親元を離れ、働き始めたのだ。
自身の人生と引き換えに、自身の人生で最も小さく、最も大きな存在の傍らに居るにようになった。呼ばれれば、たとえ夜中であっても飛ぶように駆け付ける。今度こそ、雲雀を失わないように。
自由を持たない雲雀が、自由にする事のできる唯一の存在。それが今の日出人だ。
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