閃光花火

松葉

「やばい。蝋燭が消えた」
「え、じゃあ私の火を早く」
「おう、貰い受ける」
「私も次の花火を準備しなきゃ」
「はやく！　この火を絶やすな！」

　私たちは「わー」「きゃー」と騒ぎながら次々と花火に火を繋いでいく。
　色とりどりの火の粒と光の弾ける音が舞い、私たちの夜を照らす。

　並木くんが「見ろよ波戸。秘儀『八刀流花火』」とか言いながら、両手の指の間に挟んだ8本を同時に点火して「やべえ熱い！　諸刃の剣だった！」とか騒ぐのを笑ったり。

　私が「なにこの『へび玉』って？」と火をつけて、にょろにょろ出てくる黒い燃えカスを見ながら「なんか……地味」と笑ったり。

　風向きが変わって煙に襲われる並木くんを見て笑ったり。

　あんなにあったはずの花火も全部使い終わって、急に訪れた静けさと暗闇に二人して笑ったりした。

「……あーあ、終わっちゃったね」
「ああ。でもメインディッシュはこれからだろ」

　並木くんは燃え尽きた花火を、じゅお、と音を立ててバケツの水に突っ込む。

「やっと確かめられるな。人生ってやつ」

　彼は花火が入っていた大袋から、紙のこよりのような束を取り出す。線香花火だ。

「ちょうど風も止んできたね。今なら線香花火も落ちにくそう」
「な。蝋燭に火つけてくる」
「私も行くよ」

　砂利道に少し足を取られながらも、私たちは蝋燭の近くに二人で屈んだ。