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イブの言うとおり
とても美しい少年が、寺院の前で『生き物』を拾った。
「キミも僕と同じだね」
その少年が抱いているのは子猫だった。
しかし、一つ目の子猫で、生まれたばかりのようだった。
「……キミのパパとママは兄弟だったんだね。近親の血には異形になる力があるから、キミは捨てられちゃったのか」
「イブ!!お前はまたフラフラして」
イブと呼ばれた少年は、走ってきた長身の異国美青年に抱き上げられた。
「ジュリオ、仕事放ってきちゃ駄目」
「だったらロケバスで大人しく待ってろ」
「分かったから下ろして」
そのときにジュリオはイブの腕のなかに子猫がいることに気付いて、イブを下ろした。
「腹減ってるのか」
「僕はお腹空いてないけど、この猫はきっと空いてる」
「駄目だ、置いてこい」
「この子、あと少しで命が尽きる。せめて暖かい腕の中で看取ってあげたい」
イブが言うことは絶対なのを理解しているジュリオは、そのまま撮影班に戻っていった。
そう、イブの言うとおりになることをジュリオは理解していた。
「僕はキミを食べないよ。だから安心してね」
イブは寺院の前のベンチに座って、子猫の身体を擦った。
そしてしばらく経つと、子猫は血を吐いて息を引き取った。
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