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 サイバー攻撃とは、サーバやパソコンなどのコンピューターシステムに対し、ネットワークを通じて破壊活動やデータの窃取、改ざんなどを行うことで、特定の組織や企業、個人を標的にする場合や、不特定多数を無差別に攻撃する場合があり、その目的も様々で、金銭目的のものもあれば、ただの愉快犯的な犯行も多くある。 202×年8月10日。 「土屋、今すぐ、神奈川藤沢の日輝自動車本社に行ってくれ!!」  外部からサイバー攻撃を受け、国内では先進技術の開発拠点である技術研究所で数千台のパソコンがダウンし、国外では北米やカナダなどの5ヶ所の生産拠点で一時生産休止に追い込まれた。  霞が関にある警視庁本部庁舎から飛び出し、車を走らせ、1時間半。  日輝自動車本社内の技術開発ビル内にある社内サーバー中枢システムの復旧作業に取り掛かる。 「土屋です。マルウエア(サイバー攻撃に使用されるプログラム)にやられてますね。EV RSTもしくはDESTだと思われます」  自己増殖型(またはワーム型)のランサムウエア(身代金要求型ウイルス)が、技術開発ビル内のパソコンに感染し、ビル内全てのネットワークが落ちてしまった。  そして、セキュリティーが弱い工場の生産ラインをつかさどる制御層へ飛び火し拡散されてしまった事で、深刻的な被害が出てしまった。    製造部門と情報部門の隔たりが大きい製造業は、攻撃者にとって格好の標的で、国内を含めた世界の15工場で生産や出荷を停止し、10日間にわたり多くの従業員がメールやファイルサーバーなどの社内システムを使えない状況が起きてしまった。
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