AJURNAMAT【アヤーナマット】

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ふと気づくと閉館の音楽が流れてる。今日は土曜日だから早く閉まるのだ。 急いでカウンターで本を借りる。さっき読んでいたアラスカの本と、他にも数冊の本を借りた。外へ出るとだいぶ暑さもやわらいでる。私は近くのパン屋さんでマフィンとカヌレを買った。もう少し川原で本を読んでいくことにした。 ちょうど夕日が沈むところで川面が赤く染まっている。夏の夕暮れは本当に 綺麗だ。私はその光に吸い込まれるように見入っていた。 すると、ふいに人の気配を感じた。ふと顔を上げると知らない男の人が立っている。 「こんばんは」逆光で顔が良く見えないけど整った顔立ちをしている。 「こんばんは」私も挨拶を返す。 「キレイな夕日だね。ここにはよく来るんですか?」 彼は少し歩きながら尋ねた。 「はい、時々。今日は図書館の帰りで」 私は読んでいた本を閉じる。 「そのアラスカの本、僕も読んだよ。すごくキレイだよね」 彼は夕日を眺めながら話しを続ける。 「本当にこんな世界があるんだって、感動したんだ。オーロラはもちろんだけど、厳しい自然の中で人間がこんなふうに自然と共存している場所がまだあることに」 夕日を見ながら彼はそう言った。 「私もそう思います。今でもまだそうやって自然と生きてる人たちがいるって思うとすごく嬉しい気持ちになります」 私は言った。 「こうやって自然を感じられる瞬間はすごく心地良いけど、現代で彼らと同じ感覚で生きようと思うと、すごく苦しいんだ。だから普段は表に出さないようにしているけどね」 彼が言った言葉に私はびっくりした。同じことを私もずっと思っていたからだ。 「良かったらまた話しをしよう。時々ここに来るから」 返事をしようとしたけど彼はあっという間に行ってしまった。 私も、もっと話をしてみたいと思った。今度また会えたら 名前を聞いてみよう。
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