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「え、待って。結婚した?する、じゃなくて、した?どういうこと?急展開すぎない?」
「僕、まだ桐島係長から報告もらってないんですけど」
「お父さんが倒れて大変だったんだよね?それがまた、どうして急に」
「桐島係長、まだ職場かな。とりあえずリモートしましょう、リモート」
「いや、落ち着いて。特に二階堂くん。仕事中の落ち着きを取り戻して」
連休明けの火曜日だというのに、平原と二階堂くんはわたしの誘いに快く応じてくれた。本当は出勤するはずだった金曜日、わたしの業務をカバーしてくれたのは平原だ。そのお礼も兼ねている。
「じゃあ、朝、課長と前田係長が引っくり返りそうなくらい驚いてたのって」
「うん。ほら、結婚するといろいろ手続きがあるでしょ。だから、朝一で報告したんだけど」
──親父さんの体調は大丈夫か?もう少し休んでも良かったんだぞ。
──ご迷惑おかけしました。父は今週中には退院できるので大丈夫です。……ひとつご報告したいことがあるんですが、よろしいですか。
──なんだ、改まって。
──実はこの週末に入籍しました。式などは未定で、籍だけを入れた形なんですけれど。
──おお、そうだったのか。おめでとう。相手は庁内か?それとも別の……。
──えっと、その……桐島係長、なんです。
「あんなに驚かれるとは思わなかった。こっちのほうがびっくりしちゃったよ」
「そりゃあ驚きますよ。僕だって、最初見たときは目を疑っ……」
「見た?」
「いや、その、聞いた、の間違いです。すみません」
二階堂くんの目が珍しく泳いだ。「それにしても、どうして連絡くれないんですかね。あんなにいろいろ話したのに。僕は桐島係長にとって、その程度の存在なんでしょうか」──そして完全に拗ねている。早く連絡してあげたほうがいいよ、って巧に言っておこう。
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