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#24 未来は未定
「結婚式の招待状、届いた?」
「届いたよ。10月の連休ど真ん中。おかげで有休を取らなくて済みそうだ」
「昨日、久しぶりに平原と飲みに行ったんだけど、結婚式の準備って本当に大変そう。しかも平原の部署、超忙しいから」
「保健福祉部だもんな。いまなら、二階堂のほうが早く帰れてるんじゃないか」
「そうみたいだよ。家事とか結構やらせてるって」
さすが姉さん女房だな、と巧が笑う。開け放した窓から吹き込んでくる生温い夜風が心地よくて目を閉じると、「おい、寝るなよ」と呆れたような声が飛んできた。
「どうしてわかったの?今日、適度に風があって気持ちいいの」
「電話の向こうのことはだいたい分かるようになったんだよ。おまえ限定で」
まったく、こっちは連日熱帯夜だっていうのに。──そういえば、去年のこの時期の東京はひどく暑かった。あれからもう1年も経つなんて。
平原は6月付で本庁の保健福祉部に異動になった。5月、人事異動発令が出る直前に二階堂くんと入籍し、地域振興課の面々をまた驚かせることになったのだ。
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