#24 未来は未定

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 胸の下まである髪を三つ編みアレンジでゆるくまとめるのは、わたしにとって夏の定番ヘアスタイルだ。  事務所のエアコンは効いていないようなものだし──クールビズのため、設定温度がやたら高いのだ──、人口密度の高さやパソコンから吐き出される熱風のせいで、この時期はとにかく暑い。 「はい、承知しました。迅速に対応いただいてありがとうございます。……いえ、こちらもご無理を言ってお願いしたので」  電話を切ってため息をついた途端、「なんとか収まったのか?よかったな」と隣から声を掛けられた。 「無理を言ったのはこっちですからね。にしても、勘弁してほしいですよ」 「新しい本庁の担当者、あれ、はっきり言ってヤバいよな。次からは二重で確認したほうがいいかもな」 「そうします。わたしたちも迷惑ですけど、一番困るのは市町村なんで」  そうしろそうしろ、と森内さんがパソコンに向き直る。  企画係長も変わったいま、なにかあったときに一番頼りになるのは森内さんだ。彼もそう思ってくれているらしく、最近は「指示」や「お願い」だけでなく「相談」もしてもらえるようになった。 「桐島、ちょっといいか」 「はい」  課長は変わっていないけれど、課内の雰囲気は巧や平原がいたころとは随分変わった。ちなみに二階堂くんは、今年度も政策係で奔走している。  ──人が入れ替わるのは避けられないことだけど、たまにあのころが懐かしくなるんだよね。  変わらないものなんてない。少しずついろんなことが変わっていって、いつしかそれが当たり前になっていく。  それでも──時間外に平原とお喋りしながら残業したり、二階堂くんが巧の話を熱心に聞きながらメモを取っていたり。そんな時間が二度と戻らないのかと思うと、寂しさに胸が痛むときもある。
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