#24 未来は未定

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「巧は……その、いいの?」 「なにがだ?」 「まだどこの市役所かも聞いてないし、それに……出向なんてしちゃったら、産休、取れないよ」  正直に言うと、それ(・・)について自分の意思が固まっているわけではない。  もちろん、「いつかは」と思っている。大好きな巧との間に子どもができて、家族が増える──つまり、わたしたちの未来に楽しみが増える。  だけど、現状では仕事を休むことは考えられないし、一緒に暮らすことさえできていない。巧としっかり話し合ったこともなければ、彼の本意もわからない。 「……麻紀は、俺との子ども、欲しいと思ってる?」  珍しく探るような声色に、巧もこちらの出方を窺っていることに気付いた。彼はどう思っているのだろう。前に「いいな」と言ってくれたことはあったけれど──。 「いつかは欲しいな、って思ってる、けど。……巧は?」 「俺は……おまえのプレッシャーになりたくないから、言わないようにしてたけど」  麻紀との子どもか、いいな、絶対に可愛いだろうな、って最近すごく思うんだ。ぽつりと零されたそれは、おそらく彼の本音だ。  ほっとしたような、嬉しいような、どうしよう、って迷ってしまうような……複雑な思いが胸の中で絡み合う。 「結婚願望すらなかった自分が、おまえと結婚した途端にこんなことを考えるなんて……人生って分からないものだよな。ごめん。俺、安心してる。いつかは欲しい、っておまえの口から聞けて」 「じゃあ……出向なんて、尚更」 「でも、それとこれとは別の話だ。せっかくの機会だから挑戦してほしい。課長から直々に提案されるってことは、いままでの麻紀の努力が少しずつ結果としてついてきた証だろう?」  巧の言葉が胸にツンと沁みる。だって、きっかけは他でもないあなただもの。  優秀なあなたに追いつきたくて、期待に応えたくて、支えられるようになりたくて──できることから頑張ろう、って決意した。  あれから随分と経った。まだまだあなたの足元には及ばないけれど、自分なりのやり方が見えてきて、手応えも感じている。もっと頑張りたい、上を目指したい。そんな気持ちが芽生えているのは確かだ。
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