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「おい、あれ、本当に平原か?さっきも思ったけど、ウェディングドレスってすごいな」
「森内さん、超失礼ですよ。平原は元々可愛いですから」
「見違えたな。さすが、女性は化けるってことか」
「巧、もしかして見惚れてる?……まあ、今日は特別に許してあげる」
確かに今日の平原は、いままで見てきたどんな花嫁よりも可愛くて美しい。
ふんわりとした淡いイエローのカラードレスは、明るく爽やかなイメージの彼女にぴったりだ。
二階堂くんのダークグレーのタキシード姿も様になりすぎて目を奪われるけれど、今日の主役はやっぱり平原だろう。
いつも、「夏樹に見劣りしないように頑張らなきゃ」なんて言っている平原。見劣りしているどころか、主役として堂々と輝いている。こうして遠くから眺めているだけで、感激で胸が詰まって泣いてしまいそうなくらい。
「二階堂のやつ、もっと落ち着けよ。いつもとはまるで違うな」
「平原のドレス姿を見たくて仕方ないんですよ。ほんと、ベタ惚れなんだから」
「それはもう、いつまででも見ていたいだろう。気持ちは分かる」
「……巧、今日だけだからね。わたし、心広いから」
ため息をついて立ち上がると、巧が慌てたようにわたしの手首を掴んだ。「お手洗いに行くだけだから」とその手を優しく解いて席を離れる。
──ほんの少し嫉妬しちゃうけど、今日だけは仕方ないよね。だって、本当に幸せそうで綺麗なんだもの。
「夏樹くん、琴実さんのこと見すぎ。めちゃくちゃ挙動不審じゃん」
「仕方ないよ。すっごく綺麗だもん」
「さゆの結婚式を思い出すわ。旦那さまのデレっぷり、すごかったもんね」
「もう忘れてあげて。式の日の写真、全部顔が緩んでるって本人も落ち込んでたんだから」
お手洗いに入ろうとしたとき、若くて可愛らしいふたり組とぶつかりそうになった。小柄で綺麗な女の子と、目がくりくりとキュートな女の子。二階堂くん側のゲストのようだけど、平原のことも知っているらしい。
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