#24 未来は未定

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「まな、どうしたの?」 「あ、ごめん。あの人、美人すぎて思わず見惚れちゃった。どこのファンデ使ってるんだろ。リップの色もいい感じ」 「もう、すぐ職業病が出るんだから」 「琴実さんのお友達かな。あとで写真撮るときに訊いてみよ」  顰めているつもりなのかもしれないけれど、廊下が静かなので可愛らしい声が筒抜けだ。  美人すぎる、か。自分よりいくつも若い子にそんなことを言われたら、年甲斐もなく浮かれてしまいそうだ。  ふと足を止めると、晴れやかな青空が目に眩しい。10月中旬──秋のすっきりとした快晴だ。 「こんな日にはぴったりの天気だな。晴れてよかった」  午前中にチャペルで行なわれた挙式を思い出し、ふふっと笑みが零れる。  純白のウェディングドレス姿も、息を呑むくらい綺麗だった。平原が入場するまでの間、祭壇前で彼女を待つ二階堂くんの固い表情といったらもう……。 「麻紀」  ふいに腕を掴まれて、いつの間にか自分が窓の外を眺めていたことに気付いた。振り向くと、黒いスーツにライトシルバーのネクタイを締めた巧が立っている。 「どうしたの?巧もお手洗い?」 「なかなか戻ってこないから気になって」  すぐそこの披露宴会場からは賑やかな声が漏れている。「ごめんね、わざわざありがと」──会場に戻ろうと歩き出そうとしても、彼は動こうとしない。 「巧?」 「……俺たちも、早く結婚式挙げたいな。ごめん。俺が東京にいるばかりに」  無骨な親指が、わたしの左手薬指を撫でる。思いがけないセリフに驚いて見上げると、晴れの日には似つかわしくない表情が浮かんでいた。 「いったいどうしたの。平原に見惚れてたことなら、怒ってないよ」 「いや……見惚れてたっていうよりは」  おまえのウェディングドレス姿を想像してたんだ、ずっと。真剣な眼差しをぶつけられ、胸が大きく跳ね上がる。
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