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「ただいま」
「おかえり」
今日は早かったんだな、と彼がスーツの上着を脱いでソファーの背もたれに掛ける。
相変わらずのスリーピーススーツ姿だ。ちなみに、ダークグレーのストライプ柄のもの。お気に入りのワインレッドのネクタイを締めているということは、大事な会議でもあったのだろうか。
「おかずは昨日作っておいた肉じゃがね。あとはサラダ」
「悪いな。おまえのほうが遠いのに」
「いいの。その代わり、明日は巧にお願いするね。残業になりそうだから」
キッチンを出てエプロンの紐を解こうとすると、後ろからぎゅっと抱きしめられた。麻紀、ただいま。もう一度噛み締めるように言われ、「おかえり」と頬にキスをしてあげる。
「今日こそあれ言ってくれよ。お風呂とご飯、どっち?ってやつ」
「やだ、発想がおっさん」
「おまえがいい、って言いたいんだよ」
「でも、それを言ったら夜ご飯にありつけないでしょ」
「どうして分かるんだ?」
「当たり前でしょ。夫婦、だもん」
日々は続く。いいことも悪いことも、変わっていくこともあるだろう。だけど、わたしはここにいるし、あなたもここにいる。それがすべて。それだけが変わらないこと。
なにがあっても、離れないでいよう。たくさん愛を伝え合って、笑っていよう。ひとりじゃ感じられなかった幸せを、ふたりで紡いでいこう。
一緒にいよう。一緒に生きていこう。──君と、あなたと、一生、ロマンスをしよう。
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