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──Side 巧
すぐにのぼせると勿体ないから、お湯はぬるめの40度。余計な贅肉などほぼついていない腹に腕を回して、絶対に逃がさないように捕まえておく。
乳白色のお湯に浮かぶ膨らみに触れたい気持ちは山々だが、あと少し待つことにしよう。せめて、彼女が機嫌よく喋っている間は。
「古賀さん、すごく可愛いでしょ。最近知ってびっくりしたんだけど、二階堂くんの同級生なんだって。考えてみたら、結婚式で見かけたなって」
「ああ、そういえば」
どこかで見たことがあると思ったらあのときか。世間は驚くほど狭い。
「ラブラブな旦那さんがいてね、うちと同じくらい歳が離れてるの」
「へえ。あの子、お腹が少し」
「そうなの。いま、妊娠6ヶ月だったかな。身体の調子がいいと頑張っちゃうから心配で」
だから、少しくらい残業が増えても許してね。彼女が微かに振り向いて湯面が揺れる。「ね?」と念押しするその顔があまりにも可愛くて、我慢できずに唇を奪った。
「後輩のためなのはわかるけど、あまり頑張りすぎるなよ」
「大丈夫。巧には迷惑かけないようにするから」
「そうじゃない。おまえの身体も心配だし、なにより──ふたりの時間が減ると困る」
紅くぽってりした唇を何度も啄ばみ、腹に回していた手を少しずつ上に移動させていく。柔らかいはずの突起は、少し摘んだだけですぐに固く尖ってしまった。
「俺にとって一番可愛いのは麻紀だし、大切なのも、心配なのも麻紀なんだ。わかってるよな」
「……うん。無理は、しない」
いい子だ、ともう一度唇を奪う。今度はすぐに離したりはしない。わざと音を響かせながら食んで、微かにアルコールの味が残る舌を絡ませ合う。
「巧、タバコの味がする」
「こうしてたら、すぐに甘くなるだろう?」
「そう、だけど……」
「それより、おまえの顔をちゃんと見たいんだけどな」
いつもみたいに跨ってくれ、と耳たぶを噛むと細い肩が震えた。おずおずとこちら側を向いた彼女の腰を掴んで、ぐっと引き寄せる。
「やだ……当たって、る」
「当ててるんだよ」
「もう……また、盛りついてる」
顔を背けようとした彼女の後頭部を掴み、また唇を重ねた。──だめだな、ベッドまで我慢できる気がしない。
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