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外で出すから心配するな。胸を揉みしだかれながら低い声で囁かれ、背筋がぞくりと震える。
「たく、み……だめ、隣に、聞こえ、ちゃう……」
「おまえが声を抑えれば大丈夫だ。手加減はしないぞ」
喉の奥から溢れる声、艶を纏った呻き声、アルコールとタバコをかき消すバスソルトの匂い、繋がっているところから突き抜ける快感、苦いのに甘い彼の唇、湯気で曇った鏡に映るふたりの痴態。
──まるで、五感のすべてが支配されているみたい。
「やだ、巧、ああぁっ、……そんな、に……っ」
「今日、すごいな。そのままだと尚更分かる」
そんなに悦いのか?腰を鷲掴みにされて激しく揺さぶらされる。必死に頷くとそのスピードがさらに上がり、「とりあえず一回達っておくか。一緒に」と恐ろしいセリフを投げられた。
「い、いっかい……?」
「これで終わりなわけがないだろう。俺はおまえの顔を見ながらするのが一番好きなんだ」
嘘でしょ、と目の前が霞んでいく。
ご飯を作ったあと、「先に風呂に入りたい」と言われたからそうしたのだ。あんなに空腹だったはずなのに、その感覚を思い出せない。
せっかく作ったご飯を食べないわけにはいかない。だけど、こんな状態で食べられるのかな。作り置きのチリビーンズに、ナンプラーを効かせたエスニックチャーハン……。
「なに考えてるんだ?まさか、俺以外の男のことなんて考えてないだろうな」
おまえの職場は男の比率が高いもんな。突拍子もない言いがかりだ。「違うってば」と否定しようとした唇を塞がれ、壁についた両手をぎゅっと握られる。
「あんなに褒められて、職場では随分重宝されてるみたいだな」
「だって、毎日、必死に……あっ」
「それなのに、俺の前ではこんなかわいい顔して、エロい声出して乱れて……恥ずかしいな?」
「そんなこと、いわない、で……あ、だめ、やあぁっ……」
「こら、我慢しなきゃだめだろう。隣に聞こえてもいいのか?」
そういう巧だって、結構な大きさの声で呻いてるじゃない。ていうか、誰のせいでこんなことになってると思ってんのよ。
言いたいことはたくさんある。だけど、いまにも膝から崩れ落ちてしまいそうで言葉にする余裕がない。
もうだめだ、と掠れた声に、彼を受け入れているそこが激しく収縮する。声を噛み殺すことを忘れて意識が飛びそうになったとき──逞しい腕がわたしを支え、太腿に生温かい感触をおぼえた。
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