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「さっそくこの男に罰が必要なのか、見てみましょう」
マネットがニタリと笑って指を鳴らすと、シルクハットから無数の黒フィルムが出てきた。バラバラだった黒フィルムはひとつに繋がっていき、1巻のフィルムも解けて繋がっていく。男は口をパクパクさせながら、その様子を見ることしかできない。
黒フィルムは繋がりながら男に巻き付いていき、黒い球体になった。
「では、この男に裁きを下しましょう!」
マネットが高らかに言うと、球体はゴロゴロと転がり、舞台から消える。マネットが指を鳴らすと場内は暗くなり、スクリーンに処刑場が映った。
黒フィルムから解放された男は、フラフラしながら薄暗い空間を歩く。男の自由を奪っていた縄も足枷も、いつの間にかなくなっていた。隙間なく包まれていたせいで、酸欠でどうにかなりそうだ。
(畜生、なんなんだ、あのマネットとかいう不気味な男は。あんなのに陶酔してる連中も連中だ)
男は内心愚痴りながら、テーブルセットを見つけた。テーブルセットにはごちそうが並び、高級ワインも揃っている。疲れきった男は、椅子に座ってワインを飲んだ。
大きく息を吐いて少し気持ちが落ち着くと、おなかが空いていることに気づいて食事に手を伸ばす。焼きたてのバゲットにサラミやチーズなどをのせてかじり、音を立ててポタージュを啜った。ステーキに噛みちぎると、いつの間にか仮面をつけた紳士達に囲まれていることに気づいた。彼らは不気味な笑みを浮かべた真っ白な仮面をつけており、ひとりだけ、黒い仮面をつけていた。
「なんだよ、お前たちは」
「最期の食事は美味しかったでしょう? これから貴方を罰します」
黒仮面の紳士が平坦な声で言うと、白仮面の紳士達は男をテーブルに押さえつけた。ステーキの鉄板でやけどするかと思いきや、あんなにあったごちそうもワインも、まるで最初からなかったかのように消えている。
「ぐえぇっ!」
紳士のひとりが男の首根っこを掴み、テーブルに叩きつける。男が苦しみと痛みのあまり舌を出すと、別の紳士が真っ白な手袋をした手で舌を掴んだ。
「貴方は言葉で人々を苦しめました。そんな貴方の罰は、この舌で受けてもらいましょう」
更に別の紳士が、釘を舌先に宛てがい、金槌を大きく振り上げた。
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