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白仮面のひとりが、男の左目に針を突き刺した。プツン、という感覚がした直後、針はするすると入り、脳の一部を破壊した。
「もう片方の目は、そのままにしてくださいね」
黒仮面の紳士の言葉に、白仮面の紳士達は無言で頷くと、めんどくさくなったのか、持っていた針を乱雑に突き刺した。
脳天気な男も、流石に自分の死を予感した。
「では、さようなら。咎人。次に生まれ変わる時は、罪を犯してはいけませんよ」
黒仮面の紳士は優しい声音で言うと、右手を高く上げて指を慣らした。白仮面の紳士達が、テーブルをひっくり返す。串刺しになった男はそのまま床に落ちることなく、深い穴へ落とされていく。
(なんだ、あれは!?)
残された右目に映るのは、サメのように鋭利な歯を持った大きな口。この世のすべてを飲み込みそうなほど大きな口は、男に気づいたのか、地を轟かすような咆哮を上げた。咆哮は男の鼓膜をあっけなく破った。
男は自分が落ちていっていることさえ理解することもできないまま、針ごと食べられてしまった。
スクリーンで観ている観客達からすれば、男は大きな穴に落ちたように見える。。映像が消えるとスポットライトの明かりでマネットが照らされ、観客達はマネットに盛大な拍手を送る。マネットは恭しく一礼をし、観客達を見送った。
観客が全員帰ると、マネットは場内を清掃し、軽い足取りで最上階へ行く。厳かな純白の扉の前に立つと、扉はゆっくり開いた。
マネットが白を貴重とした神々しい部屋に入ると、最奥の玉座に座った男が優しく微笑みかける。男には純白の羽が生えており、頭上には金色の輪が浮遊している。アクアマリンのように澄んだ水色の瞳は、ため息が出るほど美しい。
「マネット、今日もよくやった」
「お褒めにあずかり光栄です、ルシファー様」
マネットは恍惚の笑みを浮かべ、大天使ルシファーに跪く。
「この調子で、すべての罪を浄化していってくれ」
「はい、仰せのままに」
マネットは跪いたまま恭しく頭を下げる。
隣からキィーキィーと不快な鳴き声が聞こえ、不機嫌に歪んだ目でそちらを見ると、黄金の大きな鳥籠の中に、浅黒い肌に赤い瞳、そして蝙蝠のような羽を持った悪魔達が、籠をつかんでマネットに何かを訴えかけるように鳴いていた。
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