6月24日(天川麻弥3)

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 家には大和田が潜んでいる。そのあと起こる未来も予知が済んでいる。それを知った上で、そこに帰るというのは背筋が震えるほど怖い。  “でも私がお姉ちゃんだから”  その一言が勇気になる。  予知を狂わされたことは癪だが、沙弥の行動は絶対に間違っていない。たとえ死ぬことになっても、胸を張って“沙弥は正しいことをした”と言える。 「姉が妹の善行を無かったことにしてどうする!」  麻弥は走った。姉として妹の行いの意味を守るためにーー。沙弥が自分の行動に後悔を抱かないためにーー。沙弥から大和田の驚異を遠ざけるために走って家に帰った。  汗だくで見る我が家は今朝と別段変わりない。汗で濡れた髪の毛の先が異常に冷たく感じる。  辺りに見渡すが警察の姿はない。未来予知でも警官が訪ねてくる可能性はゼロと言っても良いくらいだ。けど、沙弥が呼ぶと言った。未来を変えれる沙弥が言ったのだ。何もかも上手く終わらせるには沙弥の言葉を信じるしかない。 「頼んだよ、沙弥……」  未来予知の結果は非常に悪い。それでも麻弥は鍵を取り出して、玄関を解錠した。
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