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家の中をゆっくり進む。緊張からかリビングがいつもより遠くに感じられる。
普段から掃除は心がけている。でも今日はより一層掃除に時間をかけた。せっかく綺麗にしたのに招きたい人は来ず、招かれざる客が来るのだから皮肉なものだ。
「早起きして掃除したんだけどなぁ」
深呼吸をしてからリビングの窓開けに行く。ここから大和田が侵入してくる。
不審者として職質されても逮捕までは至らない。まだ犯罪を犯したわけじゃないし、同級生の家だ。「告白しようと待っていた」とでも言えば厳重注意くらいで済んでしまう。だから麻弥は決定的瞬間を狙うことにした……大和田が逮捕され、沙弥が憂いなく暮らせるようにするために。
“予知通り襲われ、その瞬間を警察官に助けてもらう”
沙弥が警官を呼んでくれることを前提にした作戦。
「私がお姉ちゃんなんだ! お姉ちゃんがやらなきゃ!」
自分に言い聞かせて窓を開けた。涼しくなった夕方の空気が頬を撫でる。クルリと外に背を向けるとカウンターヘ向かった。
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