中学卒業

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「沙弥さんは言ったよね? もう麻弥さんを助けようとしたって」 「ええ。過程は変わるけど。でも結果は変わらなかった」 「それでも僕に魔法をかけたのは、僕なら麻弥さんを助けられると思っているから……。どうして僕なんだ? 麻弥さんとも特別仲が良い訳じゃない。沙弥さんから信頼されるようなこともしていないのに。なんで?」  妙な無言が訪れた。電話の向こうで裕貴の質問に何を思い、何を考えているのだろうか……。 「……下澤くんを頼った理由。ごめんなさい、今は言えない。でも、私は麻弥を助けられるのは下澤くんしかいない……そう信じて魔法をかけた」 「……分かった。できる限り協力するよ。それで具体的にはどうするんだ?」  半年後、麻弥は死ぬ。タイムリミットは短い。沙弥が以前の経験から最良の方法を見つけてくれてると良いのだが……。  「そうね。まず麻弥の死についてちゃんと説明しておいた方が良いわよね? これから会える?」 「分かった。一時間後に中学校前の喫茶店で」   電話を切ると裕貴は身じたくを整えた。裕貴にとって人生で2回目の高校入学を控えた春休みは女の子と喫茶店で会うイベントで幕をあけた。 「半年後の記憶がなけりゃ浮かれてただろーなー」  玄関の鏡に写った野暮ったい少年に声をかけて家を出た。    
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