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米ひつを前に、麻弥は耳を澄ます。カウンター下にあるため麻弥の視界から部屋の中の様子は見えなくなる。このタイミングで大和田は部屋に侵入してくるのだが、流石は未来予知の魔法だ。挙動からタイミングまで寸分違わず大和田が侵入した。気配と足音を殺しているが、忍者の訓練を受けたわけでもないので集中すれば一般人の麻弥でも察知できる。
立ち上がった麻弥は米を研ぐ。大和田はL字のソファーの陰に潜んでいる。
大和田との距離は数メートルしかない。いつでも飛び出せる距離だ。米を研ぐ手が震える。それを必死に抑え平静を装う。
大和田は隙を伺っている。それに対し麻弥は警察が来るまで時間を稼がなくてはいけない。米を研ぐ音だけが永遠と続く。とはいえ、この膠着した状態がいつまでも続く訳じゃないことは麻弥も既に知っている。大和田からしてみれば、いつ他の家族に見つかるか分からない危険と隣合わせ。
大和田が行動を起こす前に他の部屋に逃げることも考えた。浴室や自室なら鍵がかかる。けど、その予知の結果は鍵を破壊されてしまい逃げ道をなくして万事休す。それに警察が来たとき救援の声も聞こえなくってしまう。
けど、リビングなら廊下に出れば玄関まで一直線だし、庭に通じる窓もある。
ここで対応することを決めた矢先、現場が動く。
“警察の者ですが不審者の目撃情報がありまして”
インターホンから警察の声が聞こえた。先に来たのは警察だった。
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