6月24日(天川麻弥3)

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 大和田が一旦リビングへ消える。戻って来たときには大きなスーツケースを持っていた。  麻弥の横で開くとハンカチと粘着テープを取り出した。 「少しだけ苦しいけど、我慢してくれ」  麻弥の口を開くとハンカチを押し込み粘着テープで蓋をする。次に毛布を取り出すと麻弥の体を包み上から粘着テープでぐるぐる巻にした。  空っぽになったスーツケース。次に中を埋めるのは麻弥の体。    麻弥の目から涙が溢れる。魔法を使ったからじゃなく、普通の人間と同じく恐怖からくる涙。「助けて!」と叫ぶことも暴れることもできず、視界が闇に飲み込まれた。  スーツケースが縦向きになったことで天地が動く。地獄へ移動が始まったが直ぐに止まった。  再びまた天地が動く。また、床に倒されたらしい。スーツケースが開かれ光が差し込む。  怖い……また大和田に何かされるのかと思うと怖くて、ギュッと目を瞑って視界を閉ざした。  体を起こされ後ろから強く抱き締められた。強く、それはもう苦しいほど強く……強く…………。    今度は正面から別の手が伸びてきて、口の粘着テープを剥がして口の中のハンカチを取り出した。   「麻弥! 麻弥!」  でもその手の持ち主の声は世界で1番聞き慣れた声だった。目を開くと正真正銘、本物の沙弥が目尻に涙を溜めて麻弥を見つめていた。   「あっ……あっ……」  麻弥も沙弥の名前を呼びたい。けれど、痺れが残っており上手く言葉に出来ない。     「色々と言いたいことはあるけど、兎にも角にも無事で良かった」  沙弥が柔和な微笑みで麻弥の髪を撫でた。優しい手つきが麻弥の冷えきった心を温めていく。大和田に捕まったときもう会えなくなると諦めていたがこうしてまた沙弥の温かさを感じられているーーーー生きていられているのだ。  涙がとめどなく流れ始めた。体が痺れて涙を拭えない。背後から強く抱き締められていて拭えない。代わりに沙弥が拭う。  涙でボヤけた目で沙弥の手を見て違和感に気がついた。沙弥がいるのは正面。では後ろから抱き締めているのは誰だ?
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