6月24日(下澤裕貴3)

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6月24日(下澤裕貴3)

『今日の、約束のことなんだけど、ごめんなさい! 急に大切な用事ができて……ごめんなさい!』  突然掛かってきた麻弥からの電話。一方的に要件だけを伝えられて切られてしまった。 「どうした? 変な顔して」  隣を歩いていた浩一が裕貴を見る。 「っと、このあと約束があったんだけどキャンセルってさ」  これから起こる事件の舞台は天川家。彼女たちの家で食事をご馳走になる約束がキャンセルになるのは致し方無いことだ。 「ま、そういうこともあるだろ」  浩一の言う通りではある。事件の件はともかく、約束がキャンセルになるというのは珍しい話しじゃない。 「そう、なんだけど……」  ただ、さっきの麻弥の対応は気になる。理由は説明出来ないだろうが、人の話しを聞いてちゃんと会話ができる子だ。沙弥から聞かされて余程、動揺しているのか……。 「何だ……その約束、そんなに楽しみにしてたのか?」  正直に言えば楽しみにしていた。この約束があったからテストを乗り切れたと言っても良いほどに……。でも、裕貴の胸の中で固まっているのは楽しみが奪われたかじゃなく“形容し難い不安”とでも言うのか。ハッキリした理由はないが不安だけが胸中を漂っている。 「まあな。テスト前に約束してたからなあー」  沙弥から連絡をもらった裕貴は麻弥にも本当に良いのか確認をした。その時の事を思い出しスマホを見る顔が緩んだ。その顔から浩一は悟る。 「女か?」 「な、なんでそう思う?」 「付き合いは短いけど、友達の表情の変化くらい見分けれる。」  つまり浩一はちゃんと見ていてくれている。上辺だけの言葉で“友達”と言うのではなくて行動で示してくれていた。  裕貴は隠す必要ないなっと観念した。 「良い記者になれるな」 「サンキュー! ホラ、気になるんだろ? 行けよ!」  そう言って浩一は裕貴の背中を叩いた。 「どうせフラれるんだ! ぶつかって砕けてこい!」  どうやら浩一は約束をキャンセルされた理由を勘違いしたらしい。まぁ、的中させることは至難の業なのだが。  ともかく、これだけは言っておかなくてはいけない。 「まだフラレてないからな! まだ片想い中だ!」 「ハイハイ!」    ハッキリと伝えるとスマホを耳に当て麻弥に電話をかける。浩一とはここで別れて急いだ。
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