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沙弥と裕貴は一旦パトカーの陰に身を潜めた。警察が返り討ちにあったのは完全に想定外だ。
「と、とりあえず警察と救急車に連絡しよう」
裕貴の提案に沙弥も即刻同意した。今度は不審者の目撃情報だけではなく被害者もいる。ましてや被害にあったのは警察の人間。大勢の警官が動員されるはずだ。
問題は帰ってきた天川家の人間の安否。沙弥は立ち上がって庭を見た。庭と道路を繋ぐ轍はあれど車は停まっていない。
「お父さんもお母さんも帰ってきていない……」
沙弥が振り返り伝える。あと天川家の人間の中で確認が取れていないのは麻弥だけ……。
裕貴はパトカーの陰を飛び出した。今ならまだ間に合うはずだ。
「大和田くんの……犯人の手元、気をつけて!」
沙弥のよく通る声が住宅街に響く。この短時間で犯人の特定まで済んでいるということは、小海高校の中でも沙弥たちに近しい人物なのかもしれない。
門から階段を駆け上り中途半端に開いた扉を大きく開く。そこにはあの時すれ違った包帯を巻いた巨漢の男が立っていた。大きなスーツケースを持ち、仰天した顔で裕貴を見ている。
直前に沙弥から忠告してもらったから裕貴の視線は自然に男の手元に行っていた。片方はスーツケース。もう片方は見慣れない黒い物体。クワガタムシの模型…………ではないよな?
なんにせよ、警察からは奪っていないようだ。一般人は持つことすら許されず、人の命を容易く刈り取ってしまう危険な武器、拳銃。
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