麻弥の死

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麻弥の死

 裕貴は喫茶店に着いた。家を出たのが早すぎたようで沙弥との約束の時間まで、まだ30分以上ある。中学校の校舎が見える席に座ってカフェ・オ・レを注文する。 「殺人事件……。食い止めるなら犯人を捕まえるのがベターだよな」  ストローでコップの中の液体をかき混ぜる。氷が硝子に当たってカランカランと音が鳴った。  裕貴は中学生時代の記憶を呼び起こし、麻弥に関する情報を集めた。推理小説などでは大抵の場合、被害者の知人に犯人がいる。 「悪い噂は聞いたことないから、怨恨の線は薄いか……。じゃあ、何か重大な秘密を知ってしまって口封じされたとか、衝動的な犯行とか? 」  考えれば考えるほど犯人像が膨らむ。そもそも知人の中に犯人がいたとしても中学のときの人間とは限らない。これから半年間は高校生として人間関係を築くし、バイトを始めるかもしれない。他にも血縁関係の知り合いだっているだろう。  それに気づいたとき今ここで犯人像を考えても全く絞り込めず無意味なのだと悟った。     
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