7月7日(天川姉妹)

4/4
前へ
/209ページ
次へ
 部屋に入った沙弥は閉ざされた扉に背中を預ける。自分の好みにコーディネートされた部屋なのに、不吉な予感がざわざわと胸の奥で騒ぎ立てるせいで別の部屋に来てしまったみたいだ。落ち着かないーー。  2ヶ月後の事件なのに今の時点で被害者が未確定なのは少々腑に落ちない。殺人におよぶなら相応の動機と計画が必要だと思う。あくまで沙弥の考えで、殺人犯の考え方は違うのかもしれない。  たった2ヶ月の間に殺人を犯すような動機が生まれるのだろうか? それも身近な人物じゃなく不特定な人間に対して……。  或いは動機なんて元々ない。被害者は誰でも良いーー「無差別殺人」。  だとすると今まで麻弥だけが被害者になっていた理由が不明だ。この時間軸に関して言えば麻弥が息子を警察送りにしたことを動機にできる。けれど今までの時間軸では麻弥と大和田俊之の間に殺人の原因となるほどの諍いは無かったはずだ。   “麻弥が嘘をついている?”  そう考えるのが妥当だろうか。ここから2ヶ月の間に麻弥が大和田定信に殺される理由が生まれるーー。    ともあれ犯人の目星がついたのは大きい。速やかに協力者と共有するべきだ。  沙弥は大和田定信の情報を裕貴に伝えた。 
/209ページ

最初のコメントを投稿しよう!

11人が本棚に入れています
本棚に追加