7月16日(下澤裕貴)

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 リビングに通された裕貴はソファーに座るように指示を受けた。 「ごめんね。料理ができるまでもう少しかかるから。テレビでも観て待ってよ」  麻弥がテレビをつけるとニュースがやっていた。リモコンを裕貴に握らせた麻弥はカウンターの中に入って包丁を握る。普段から料理しているだけあって包丁捌きは大したものだ。それがコスプレ用の服であっても堂に入った料理をしている姿は本物のメイドさんに見えてくる。 「どーしたの? 麻弥のことじっと見て」   隣に座ってきた沙弥は裕貴の手からテレビのリモコンを取り上げるとテレビを切った。 「あの服で料理を作ってくれるてるとメイドさんを雇った気分になるよね」 「ふぅぇ!?」  天川家リビングの広さは一般家屋と大差ない。ダイニングテーブルを挟んだくらいの距離なら話し声は筒抜けで麻弥が異様な声を発した。 「へーー……下澤くんもヤッパリ好きなんだ。メイドさん」 「男でメイドさんが嫌いならそれはパチモンの男だ!」  裕貴のメイドさんへの憧れは硬く握った拳から伝わってくる。   「そっかそっか! 麻弥にメイド服を着せたのは正解だった! いっそうのこと麻弥に専属メイドになってもらう? 1時間100円くらいで」  沙弥の右手の親指と人差し指がくっつきお金の形になる。整っていた沙弥の顔はゲスい笑いを浮かべていた。 「沙弥ーー! なにを急に変なこと言い出すの! 下澤くんも財布を出さないで!」     麻弥に叱られて裕貴の手がビクッと震えた。沙弥も首を竦めたあと、残念そうに笑う。 「怒られた。麻弥はマジメ過ぎるよねー」   裕貴も冗談っぽく「そうだよな」と返事をする。 「だいたい何で沙弥がお金をもらう側なの? そもそも……近すぎ」  麻弥が沙弥を睨む視線は包丁よりも鋭い。沙弥はさり気なく移動して裕貴との距離をとった。
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