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ほどなくして扉が開いた。ドアに備え付けられたベルが来客を知らせ、天川沙弥が入店する。その容姿に客の視線が釘付けになった。
沙弥は客の視線など意に介さず、まるでランウェイを歩くモデルのように颯爽と店内を進み裕貴の前に座った。
「遅くなってごめんなさい」
「いや、僕が早く着すぎただけだから」
沙弥は定員にレモンティーを注文する。
「早速だけど、本題に入っていいかな?」
「ああ。そのために来たんだから」
沙弥は窓の外を見る。卒業式の日に麻弥が裕貴の卒業を祝った校門。沙弥は感慨深そうに視線を送った。
「中学校のころ、私と麻弥はずっと一緒だった。クラスも同じで部活も、登下校もずっと一緒だった。でも高校に入学して私たちが一緒にいる時間は少しずつ減った。別のクラスになって、お互い別の友達ができて一緒に帰ることも無くなっていった」
ずっと一緒に育ってきたからといっても、いつまでも一緒にいられる訳じゃない。分かっていたことだろうが沙弥は寂しいそうに目を伏せた。
「麻弥の異変に気がついたのは夏休み前。太陽が照りつける暑い日の帰り。街を男の人と歩いていた」
その事実に裕貴は胸を締め付けられるような感覚に陥った。
「高校生なんだ。彼氏くらいいたっておかしくないと思うけど?」
特に天川姉妹は二人揃って美人だ。彼氏くらい選びたい放題だろう……裕貴はそう結論付け受け入れる。
「いるはずないっ!」
沙弥は強く否定した。
「麻弥に彼氏ができるはずないの」
沙弥は真っ直ぐ裕貴の方を見てハッキリと否定する。どうしてそこまで断言できるのか裕貴には分からない。双子ならではのシンパシーみたいなものでもあるのだろうか?
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