8月1日(下澤裕貴)

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 浩一と明里が会話を続けている。内容自体ごくごく普通のインタビュー。しかし、浩一と明里が兄弟かもしれないうえ、浩一が明里に恋をしているとなれば傍らに立っているだけで落ち着かない。  “兄弟間での恋愛はアリ……なのか? 応援していいのか?”  裕貴の中で答えがでない。2人が義兄弟なら問題はないのだろうが、顔立ちはどことなく似ていている。他人の空似なら良いのだが本当に2人が兄弟なら血の繋がりがあり恋愛のハードルは一気に高くなってしまう。  浩一が2人の関係を証明するような発言を過去にしていなかったか、裕貴は記憶を遡る。  高校に入学してから龍宮城のプレオープンに行ったし、学校行事でキャンプにも行った。色々なことをたくさん話した。その会話のなかで明里との関係をほのめかすことを言っていなかっただろうか?  “アレ…………?”  会話を思い出していると何か違和感があった。違和感の正体は掴めないものの、胸の中がザワつく。胸の中で嵐が発生したのかと思うほど激しく、苦しい。この違和感を放置してはいけないと告げられているみたいだ。 「お友達さんの方はどうですか?」 「えっ?」  明里の言葉で裕貴は現実に帰ってきた。明里や浩一、テレビクルーが裕貴の回答を待っている。だが、裕貴は考え事に気を取られていたため質問を聞いていなかった。 「えっと……そう、思いま……す?」    質問の内容がわからなければ答えようも無いので、こんな答えかたになってしまった。  カメラのレンズに睨まれている。回答を誤ったのか不安がこみ上げてきたが、浩一のニヤけた顔を見て正解だったと確信した。  裕貴の回答で喜んだのは明里の方もだ。コチラは営業スマイルなのかもしれないが、白い歯を見せ落ち着いた顔で笑っている。明里から数歩移動してカメラを誘導した。 「ではでは、お二方の了承も得られたことですし、早速、お化け屋敷に向かいましょう!」  明里の後ろには野次馬が集まっている。カメラが捉えているのは更にその奥にあるアミューズメント施設の屋根だ。
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