8月14日(下澤裕貴)

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 事前のシミュレーションとは場所も雰囲気も変わってしまったが、予定通り告白をしようと決意した……そこまでは良い。しかし、いざしようとすると言葉が出てこない。 「えっと……その…………」 よくよく思い返してみると今日花火を観て告白することは決めていたが言葉は考えていなかった。寧ろ、自然に出てくるのものだとさえ思っていた。  無言の2人とは打って変わり花火は連発される。終わりが近づいてる証拠だ。  “好きだ。付き合ってほしい”  これが1番ベターなのだろうが、こんな短い言葉で良いのだろうか? もっと心に響く気の利いたセリフを言うべきじゃないのか?  麻弥を待たせているという焦りと自問が交互に攻めてくる。その間もどんどん花火が打ち上がり、空で開く。そして、裕貴が答えを出す前に一際大きな爆発音が轟いた。祭りの最後を締めくくるのに相応しい大玉だ。  空で咲いた火花が柳の木のように降り注いで消えると静寂と闇が帰ってくる。 「花火、終わっちゃったね……」  麻弥は名残惜しそうに夜空を見上げた。華やかだった夜空は黒一色で地味になってしまった。  静かな夜に麻弥は寂しく感じているかもしれないが、裕貴にはこの静けさが情けないと責めてきているように感じられてしまう。  今日、この時に……! っと決めていたのに何もできず終わってしまった。 「麻弥さん……僕、は!」 「下澤くん。今日は楽しかった!」  そう笑いかけた麻弥からはさっきの寂しそうな感情はなくなっている。このまま気持ちを伝えずサヨウナラなんてダメだ。 「まだ! 僕は麻弥さんに伝えたいことがあって!」  麻弥にこの気持ちを伝えたい。それにタイムリミットの9月も迫ってきている。沙弥が麻弥を救うために練った計画に、もう猶予はあまりない。  「だからもうちょっと…………じ、かん……を?」   まだ気持ちを伝える言葉は見つからない。このまま勢いに任せて言ってしまおうとしたが、それを阻止するかの如く麻弥の指が突き出された。        
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