9月8日3回目(下澤裕貴)

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9月8日3回目(下澤裕貴)

 また今日をやり直した。今回も学校を早退して麻弥を待ち伏せしている。何人もの生徒が校門を出ていくのを見送ったが、やはり麻弥の姿は見えない。また姿を消すつもりだろう。しかし、幸いにも今回は麻弥がこのタイミングで消えることが分かってる。校内にいる沙弥が麻弥を捕まえて、ここまで連行してくる。万が一、沙弥が失敗しても、こうして裕貴が校門を見張っていれば麻弥を捕まえられる。そういう算段だ。  海が近いこともあり、体を押すように強く吹く風には潮の香りが混ざっている。 「確か台風が近づいているんだっけ」  天気予報をみたとき台風が接近してきていると言っていたのを思い出した。直撃するのは2日後のはずだが、もう影響が出始めているのだろうか?  そんなことを頭の片隅で考えていると校舎の方から走ってくる人影が見えた。 「下澤くん!」  血相を変えた沙弥が叫ぶ。それだけ何が起こったか想像するのは容易かった……。
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