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9月8日6回目(下澤裕貴)
また今日へ戻った。電車に揺られていており、小海高校に行く途中に戻ったようだ。
入口の前に移動して直ぐに降りられるように準備をする。これくらいのことじゃあ小海高校に到着する時間は殆ど変わらない。
それでも裕貴は扉が開いたタイミングで駆け降りた。小海高校の下校時刻まで余裕はあるが、意識せずとも歩く速度が早くなってしまっている。改札を抜け行き交う人を避けながら沙弥にメッセージを送ろうとした。しかし、先に沙弥から電話がかかってくる。
小海高校はまだ授業中のはず……。胸の奥が苦しくなるのを感じながら電話にでた。
『ごめん! また逃げられた!』
開口一番に飛んできたのは謝罪の言葉。予感が的中してしまった。
『今、どこ? 時間を戻すからどこかで落ち合おう』
記憶を保ちつつ過去に戻るには沙弥の側に居なくてはいけない。
「電車を降りたとこ! 海沿いの道を……い、く…………あっ!」
駅を利用する人たちのなかに麻弥がいた。油断していた。まさか死ぬために行方をくらませた麻弥とこんなところで遭遇するなど想像できるだろうか? 普通、もっと人気の無い場所に居るのものではないのか?
「いた! 駅に麻弥さんがっ!」
それだけ伝えて麻弥を追いかけた。
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