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駅のベンチに座り通学、通勤の人々を見送った。麻弥は手の中でスマホをくるくると回して手遊びをしている。タッチパネルのガラスと保護ケースのシリコンの感触が交互に手のひらを撫でていく。
“あの電車……。下澤くんが乗っているやつ”
立ち上がるとスマホで裕貴とのメッセージ画面を開いた。
『窓の外を見て』
簡素な文だ。あっという間に打ち送信できてしまう。それと同時に電車が停車した。丁度目の前の窓に裕貴がいる。吊り革にぶら下がって、片手にはスマホを持っていた。
直線で向き合っていた裕貴の目がどんどん大きくなり、驚いた様子が見て取れる。
これで裕貴が小海高校に押しかけることはなくなった。あとは裕貴を撒くだけ。簡単だ。
裕貴に手を振り改札を潜った。後ろから「麻弥さん!」と呼ぶ裕貴の声が聞こえていた。
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