9月8日7回目(天川麻弥)

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 パンケーキ専門店を出たあと、学校には行かった。サボってしまったという後ろめたさがある。  薄暗くなってきた。台風が近づいているからか風も強く雲の流れも早い。麻弥が歩いている場所は文陽高校の側にある自然公園の遊歩道だ。先程から強風で何枚も木の葉が飛ばされていく。まるで猛獣の唸り声のように聞こえる風の音。林の木々が煽られると猛獣が駆け回っているのではと、想像してしまう。  林の反対は池がある。遊歩道はこの池に沿って伸びていた。池の水面には波がたち、優雅に泳ぐ鯉の姿は見れなくない。  靡く髪を押さえながら遊歩道を進んで行くと東屋が見えてきた。中に入りベンチに座る。壁が無いので風除けの効果はまったく無い。視界の中で髪の毛が踊り狂っている。  しばらくして、踊り狂う髪の毛の隙間に人影が入り込む。風の音の中にハイヒールで歩く音が混ざり、近づいて来た。ハイヒールの人物は麻弥を見下ろすように目の前に立つ。冷淡な瞳を麻弥は怖気づくことなく見返した。 「天川、麻弥さん?」  女性の質問に麻弥は頷く。 「私はーーーー」 「知ってます、水端明里さん」  麻弥は明里の代わりにその名を呼ぶ。知的な彼女の顔に嫌悪の色が現れた。  
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